病院内の競争力分析

一般企業では、全社の経営計画を策定する際に、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)という分析手法が広く普及しています。詳しくは紹介しませんが、各事業分野の成長率と市場シェアを用いて、自社の経営資源をどの分野に集中すべきかを判断するために、1970年代から用いられている伝統的なフレームワークです。

ここでは、PPMを病院用にアレンジした「MDCポートフォリオ分析」という手法を紹介しましょう。必要な作業は、各病院のページより、MDC別の医療圏シェアと効率性指数(在院日数指標)を調べ、医療圏シェアを横軸に、効率性指数(在院日数指標)を縦軸にとり、18分類のMDCをそれぞれの座標位置にプロットするだけです。この作業によってどのようなことがわかるのか、以下の事例を用いて説明しましょう。

MDCポートフォリオ分析

このチャート上では、競争力のあるMDCほど右上に位置します。X病院の例では、5:循環器系、14:新生児系、8:皮膚系などです。これらのMDCは、地域において相対的に多くの患者が集まり、かつ、平均在院日数が短く効率的な医療が提供されていると考えられます。病院としては、自信をもってこれからも伸ばしていきたい花形分野だと言えます。

一方で、左下に位置するMDCは競争力が低く、抜本的な見直しが必要です。X病院の例では、15:小児系、2:眼科系、4:呼吸器系などです。これらのMDCは、患者も集まっておらず、効率性も低いため、一般企業であれば、ただちに事業撤退を検討すべき分野です。

また、右下に位置するMDC(9:乳房系や13:血液系)は、地域において多くの患者を受け入れている反面で、平均在院日数が長いことがわかります。効率性を改善できれば病院収益に大きく貢献するだけに、クリニカルパスや後方連携の精査が必要な状況です。また、左上に位置するMDC(11:腎・尿路系など)は、効率的な医療を提供している反面で、集患力が弱いため、地域の開業医などへの情報提供を通して、患者数を増やすためのマーケティングを推進すべきだと考えられます。

このように、MDCポートフォリオ分析は、病院経営の全体の方向性を判断する際に参考となるフレームワークです。もちろん、撤退などの重要な判断をする前には、その要因や地域医療への影響を詳細に検証する必要があることは言うまでもありませんが、病院情報局を使えば、経年変化や他病院のポートフォリオも簡単に作成できるため、ぜひご活用ください。

(2010年10月)

加藤良平
株式会社ケアレビュー 代表取締役
一橋大学非常勤講師(医療産業論)

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  • 2014年3月追記:プレミアム機能を使うと、上記のようなチャートを簡単に作成できるようになりました!

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