病院間の競争力分析

病院情報局で公表されているデータを用いると、各地域などにおける病院間の競争力を簡単に比較することができます。

必要な作業は、病院間比較のページより、比較したいDPC分類について病院の患者数と効率性指数(在院日数指標)を調べ、患者数を横軸に、効率性指数(在院日数指標)を縦軸にとり、それぞれの座標位置に各病院を以下の図のようにプロットするだけです。この作業によってどのようなことがわかるのか、以下の事例を用いて説明しましょう。

病院間競争力分析

このチャート上では、競争力のある病院ほど右上に位置します。上記の例では、U病院、B病院などです。これらの病院は、地域において相対的に多くの患者が集まり、かつ、平均在院日数が短く効率的な医療が提供されていると考えられます。この地域に住んでいる患者が当該分野の治療を受ける場合には、ファーストチョイスとなる病院だと言えます。

一方で、左下に位置する病院は、この地域において当該分野の診療を継続していく必要性が低いと言えます。この例では、L病院、K病院、Q病院などです。これらの病院は、患者も集まっておらず、効率性も低いため、患者の立場から見ると、あまり選択したくない病院です。冷たい言い方ですが、このような競争力の無い病院は当該分野から撤退し、競争力のある病院に医療資源(医師や病床)を集約したほうが、地域住民のためになるのではないでしょうか。

このように、地域内の各病院の競争力を可視化することは、個別の病院経営に役立てると言うよりも、各地域における地域医療計画の見直しや、医療機能連携の協議などにこそ活用していただきたい手法です。

このような議論は、病院の利害も絡むためこれまでタブー視されてきましたが、ここで忘れてならないのは、情報にアクセスできるのは病院関係者だけではなく、地域住民、病院職員、開業医、銀行や取引先などの多くのステークホルダー(利害関係者)も、今や情報を容易に入手できる状態になっているという認識です。情報がオープンになっている以上、もっとも良い病院で治療を受けたいと考える地域住民のニーズや、優れた病院と取引したいと考えるステークホルダーのニーズに沿った方向で、各地域の医療の質を高めるための議論が活性化することを期待したいと思います。

(2010年10月)

加藤良平
株式会社ケアレビュー 代表取締役
一橋大学非常勤講師(医療産業論)

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  • 2014年3月追記:プレミアム機能を使うと、上記のようなチャートを簡単に作成できるようになりました!

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